小説

『神、再び来たりて』十六夜博士(『ヤマタノオロチ』)

「あんた!
また、ケンカしたんだって!
いつまで、中坊みたいな事してんのよ!
ホント、亡くなった、お母様が悲しむ……」
 左腕に着けたコミュニケーション・デバイスから現れた、ホログラムのアマテラス姉さんは、朝からまくし立てた。二日酔いと眠気で頭が朦朧としたまま、「朝から、うっせーなー」と呟きながら、俺は起き上がる。
「うっせーなーって、何よ!あんたね……」
 姉貴は、俺の小声の独り言をしっかり聞き取って、しっかり反撃してきた。あーだこーだと、飽きもせず、まくし立て続けている。よくも毎回こんなに怒ることがあるもんだと、俺は半ば感心しながら、姉貴の話を聞き流した。コミュニケーション・デバイスを着信拒否にしておかなかったことを俺は後悔した。
「痛ててて…」
 俺は二日酔いの頭だけでなく、体の節々が痛むことに気付く。そういや、姉貴の言う通り、昨日、キャバクラ『ワルキューレ』で派手な喧嘩をしたことを思い出した。
『ワルキューレ』は、俺の行きつけのキャバクラで、キャバ嬢のブリュンヒルデちゃんがお気に入りだ。昨日は、帝釈天とかいう横柄な野郎が、金にモノを言わせて、俺と楽しく飲んでるブリュンヒルデちゃんを持っていこうとしやがった。見るからに、偉そうな態度と、宝飾品にまみれたチャラい風貌で、いけ好かない野郎だった。コロニー・I(アイ)で流行りの宗教団体のボディーガードをしているらしい。ボディーガードらしく筋骨隆々で、文句があるならやるか?ってな雰囲気を醸し出していやがった。『弱きを助け、強気を挫く』が信条である正義漢の俺にとっちゃー、最も鼻持ちならない奴だ。なんで、「ちょっと、兄さん、ブリュンヒルデちゃんと飲みたかったら、俺を殺してからにしな」って言い放ってやった。その結果、やり合っちまったって訳だ。流石、有名な宗教団体のボディーガード。かなり、強かった。まあ、最後はボコボコにしてやったが。とは言え、こんなに身体中が痛いのも久しぶりだ。
「まあ、喧嘩のことはそのぐらいにして、今日は、あんたに伝えることがあるの」
 一通り、昨日の喧嘩のことを叱り飛ばした後、姉貴は唐突に言った。
「ジェネシスの初代特派員に、あんた選ばれたから」
(なるほど……)
 今日の本題はこっちかと俺は悟った。

 およそ3万年前、地球は核戦争によってほぼ壊滅した。生き残った人類は、放射能に侵された地球から逃れるため、静止軌道上にコロニーを造り、移住した。各地域のコロニーが造られ、それらのコロニー群は、連携してコロニー運営を始めた。その時、コロニー連携を管理する組織として作られたのが『オリンポス』だ。『オリンポス』は、設立当初から、放射能の影響が無くなった暁に、地球に戻ることを決めていた。それが遂に実施される。

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