小説

『丘の上の魔法使い達』洗い熊Q(『オズの魔法使い』)

「また来よったか、こいつ……」と戦車が疎ましそうに言った。
「何だよ。俺は爺さんが元気か見に来てやってるのに。今はとうとう錆が頭まで回って独り言いう様になっちまったと思ったが……何だ、珍しくお客さんがいるのか」と嘲笑しながら言う猫は、戦車上からカカシを見下ろしていた。
「こいつと関わるな。喧しいだけだ」と戦車が言った。
「だから俺は爺さんの事が心配なんだって。こうして暇さえあれば来て……」
 そう言いながら猫は均衡を保ちながら細い砲身の上を歩き始める。そして砲身の先、砲口の穴の上に辿り着くと御辞儀の様に砲口に顔を突っ込む。そして大声で叫んだ。
「元気ですか~~!?」
「ええい、やかましい! いい加減にしろ!」と戦車は怒った。
「にゃはは! 爺さん、元気だ。良かった、良かった」
 猫は笑いながら砲身を滑る様に降りて行く。その二人のやりとりを見てカカシは言った。
「お二人は親友なんですか?」
「親友なもんか。所謂、腐れ縁というものだ」と戦車が言った。
「爺さんは腐らず錆びているがな」とにやつきながら猫は言った。
「わしがここで休む様になってから、周囲を彷徨き始めた野良猫。疎ましいだけの存在だ」
「休む? 爺さん壊れてるだけだろ?」
「何かと休んでいるわしにちょっかいを出しては邪魔をして……」
「お~い? 爺さん、俺の言ってるの聞こえない~? 遂に錆が耳の穴を塞いじゃったのか~?」
 猫は素早くまた砲身を渡り始めた。そして砲口の穴に顔を突っ込む。
「抜けてますか~~!?」
「ええい! やかましい!! それは耳の穴ではない!」
「にゃはは! 詰まってない、詰まってない、良かった」と笑いながら猫は砲身を滑り降りた。
「本当に仲が宜しいんですね。いつも、お二人はお話をしているんですか?」とカカシが言った。
「こんな耄碌の話なんて暇つぶしにもならんぞ。俺は慈善事業で来ているだけさ」と猫は足で耳を掻きながら言った。
「何だと! わしのは面白いし、為になる話ばかりだ」
「どうだか……俺が聞いてる限り、笑える話なんて一つも無かったけどな?」
「それは貴様には話していないだけだ」
「じゃあ話してみろよ~笑える話をよ~」
「よし分かった。カカシ君も聞いてくれたまえ。とっておきの笑える話をしよう」と自信満々に戦車は語り始めた。

 

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