小説

『丘の上の魔法使い達』洗い熊Q(『オズの魔法使い』)

 何でも良いんです、貴方がしなくても誰か他の人に伝えるだけでも良いんです。
 この子がここに居る事を。
 何か御礼と引き替えとはいきませんが、私の語りなら聞かせれます。何なら頼み込んで猫さんと戦車さんのお話を聞かせる事も出来ます。
 だからお願いです。
 この子に助けを、助けて上げれる人を呼んできて下さい。
 カカシの思いは静寂の景色に草々を僅かに揺らす微風のように吹き抜けた。

 
 暫くした後。ネット上の一部で一つの写真が話題になっていた。
 薄曇りで紫色に染まっている空を背景に。
 その空に向け砲身を湛える朽ちかけた戦車の上に。
 丸くなり座る猫が欠伸をして。
 その横に足を遊ばせる裸足の女の子。
 それを見守る、手が何故か靴になっているカカシが。
 逆光で薄暗く影になって写っていた。
 脇には小さくタイトルが“オズの魔法使い”と付けられ。
「――戦災孤児のご支援をお待ちしております」
 その見出しが掲げられていた。

 彼らの魔法は少しずつだが、世界中に広がり始めた。

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