小説

『銀の鱗と蝋燭と』もりまりこ(『赤い蝋燭と人魚』『浦島太郎』)

 父と母の待っている庭にでる。ちいさな亀がいっしょうけんめいにハマオモトの葉を食んでいた。
あの時の亀姫のリベンジがこんなにも長く続いていることに愕然とした。いっそふたたびあの<玉手箱>の煙をくらいたかった。
 ここで<玉手箱>のふたを開けてみせるから頼むよと懇願したけど、亀は首を左右に振りながら、ひたすらにハマオモトの葉にくらいついているだけだった。
   

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