小説

『不思議なたまご』広瀬厚氏(『金色の卵』)

「お父さん、たまごどっかに消えちゃったよ」
「えっ、突然消えたのかい?」
「えっとねっ、何のたまごだろってねっ、たまご見ながら頭のなかでねっ、いろいろ考えてたら僕、知らないあいだに寝ちゃったんだ。それでねっ、おきたらたまごが無かったんだよ。部屋んなかよく探したんだけど、どこにも無いんだよ。ほんとだよお父さん…うそじゃないよ」
「ああ、お父さんは少しも良太のことを疑ってなんかいないよ。そうか、いろいろと想像して楽しんだんだね」
「うん、小ちゃなロボットの恐竜だとか、すごくきれいな鳥だとかねっ、いっぱいいっぱい頭のなか考えたんだよ」
「そうか! 分かったぞ良太」
「えっ、なに? 」
「きっとあの不思議な虹色のたまごは、〈想像力のたまご〉だったんだよ」

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