小説

『お園』阿礼麻亜(『葬られた秘密』)

 さっぱりわけがわからしまへん。そこで、帰る道すがら、番頭さんから受け取った小さな包を開けてみました。すると、小さな桐の箱が一つ。蓋をそろりっと開けてみますと、なんとまあ、それはそれは可愛らしいかんざしが入っておりました。綺麗な飾りが付いておりましてな。わては、まっすぐ家に帰るのをやめて、その足でお園の墓に参りました。そして、桐の箱に戻したかんざしを、大事に土に埋めてやりました。

 あれから一度もお園は出てきまへん。
 それはそれで淋しいもんですな。さあそれでは、ぼちぼち失礼させてもらいまひょ。さいぜんから、店のもんが「旦那はん、お茶のお師匠さんでっせ。はよきておくれやす」いうて、やいのやいの言うとりますさかい。
 ほんま長々と聞いてくれはっておおきに。ありがとう。疲れはりましたやろ。うちの上用でもお一つどうぞ召し上がっていっておくれやす。

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