小説

『先っちょには触れないで』木村菜っ葉(『眠れる森の美女』)

 とか言いながら見て!とばかりに飛ぶ。楽しんでるよ。あなたのライブ最高ですよ。だから気持ちよくやって。と願う。
 これが美女だったら。悩まない、こちらブサイクゆえ。くそ。でもライブ行きたい。

 んー。
んー。

 バイブ音。マナーモードのまま。メールかLINEか? 音がないと分からない。メールなら見ない。LINEなら見るか。でも見ると、相手に既読マーク表示、すぐ返信しなくちゃ。そのルーティーンになる。つまりしっかり起きないといけない。寝返りの延長でスマホ取りに行くか。まだ眠っている。これは寝返りなのだから。

 やめた。あれは、彼氏の寝息だ。あぁゆう寝息なの。あたしの彼氏。すごい。いる。ここに彼氏いる。目さえ開けなければ。
 どんな彼氏? 聞きたい? エロい彼氏。答えとして0点。全然面白いエア彼氏浮かばない。代わりにリアルクソ彼氏出て来る。

 仕事で遅くなると怒る。仕事で遅くなってるんだからしょうがないじゃん。思いながら素直に叱られとく。束縛。どんだけあたしの事好きなの。うぬぼれてみた。束縛はDV彼氏の特徴らしい。このままだとDVされるのかな。やばいかな。DV。DDTはプロレス技の名前。

 腰痛い。寝返る。後ろ漏れ安心ガードを信じる。頼りにしてまっせ。ベッドがきしむ。初めて自分の音を聞いた。今日もあたしはここにいた。腰少し楽になった。かも。体勢が変わって顔が下になる。クソ彼氏の匂い。いい匂い。

 やめて。ちょっと。あたし彼氏いるから。ダメだって。入れるのはやめて。先っちょだけ?先っちょだけなら…… って世の中にそんな女いるわけない。だいたいなんだよその先っちょだけって。今までそれで成功したことあるの? 男らしく入れさせて下さい。って、いや、ダメか。入れたい。って君の中に入れたいって。ダメだもっときもい。やめた。ごめん。なんかごめん。さっきまで入れられてもいいかって思ってたけど冷めたわ。あとあたしの中気持ちよくないから。たぶん。
 まぁ生理だったからね。色々言ったけど、どっちにしろ無理だったよね。イチャコラしたのがベッドの下でよかった。このベッドの匂いが違う匂いになるのは耐えられない。

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