小説

『物語る』恵(『シンデレラ』)

 お父さんがいなくなってから、お義母様や姉たちは私を召使いのように扱う。掃除や洗濯、料理はもちろんのこと、罵声を浴びせられる日々が何年も続いている。…でも、それはきっと、私が原因。私の見た目が原因なんだと思う。
「どうしてお母様はあんなに美意識が高いのかしら」
「美意識、ねぇ」
 誰もいないと思って呟いたのに、背後から聞きなれない声が返事を返す。声の主は、黒い服装だけれど、頭や首、腕や指に幾つも装飾品を身につけた派手な男性だった。
「誰っ?」
「美意識というよりはイビリに感じるのは私だけですかねぇ」
「…それは、あなただけです」
「ほぉう」
 意味深に見つめる瞳を見ないようにした。
「それより、あなたは一体どなたなんですか?人の家の庭先に勝手に入ってきて」
「それはまた別の機会に」
結局、派手な男性は何が言いたかったのだろう。意味深に去っていく男性を引き留めることはなく、私はこのいいお天気を無駄にしないよう、洗濯物の準備を始めた。
数日後、王様から国民に向けて御触れが出た。
「国民よ、しかと聞け!明晩から三夜、お城にて舞踏会を開催する。舞踏会は無礼講!この国の者は皆、例外なく舞踏会への参加を許可する。特に、女性は皆参加するように」
 この御触れは瞬く間に国中の女性が知ることになった。なにせ、身分に関係なく、国民誰もが城へ招待されたのだ。それに…。
「三百年前の奇跡がこの時代に再び起こったのね!あぁ、どんなドレスを身にまとって舞踏会へ参加しようかしら」
「お義母様、随分と嬉しそうですね」
「当たり前じゃない!これはきっと、三百年前王子様が庶民の女性から妃をお選びになった舞踏会の再演よ!」
「お妃様を?」
「あぁ、王子様。きっとお優しくて勇ましく聡明で、美しい方に違いないわ」
 完全に意識はまだ見ぬ王子様のもとへ。そんな義母の嬉しそうな姿に、今回のことがどれだけ大きなことかを理解した。
「アナスタシア!ドリゼラ!さっそくドレスを仕立てに行くわよ!」
「あの、私は…」

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