小説

『カボチャの馬車にお邪魔』洗い熊Q(『シンデレラ』『ぶんぶく茶釜』『金の斧』)

「よくぞ本当のことを言った~。正直者の王子さまには~、この本物のガラスの靴を授けようかしまいか……」と言ったぶんぶくはおもむろに自分の頭の上に葉っぱを乗せた。
 あっ! この流れで靴に化けて、この場を納める気だ! とタヌキの思惑が彼女には分かったが、この有様ですんなり事が収まるとは到底考えられなかった。
 ――が、ぶんぶくが化けようとした瞬間。
 三人の周囲にきらきらと星屑のような光が取り巻いた。
 頭上から降り注ぐ星屑。その光の飛礫の中心から生まれるように二足揃ったガラスの靴が現れ、ふわりと王子の両手へと舞い降りた。
 思わず頭上を見上げるシンデレラ。その見た先、星屑が幻のように消えゆく中。
 しーと口指立てて蜃気楼の様に消えゆく和田さん。元い、大妖精の姿が見えたのだった。
「大妖精さん……」
「良かった、シンデレラ。ガラスの靴が戻ってきたよ!」
「……王子様」
 戻ったガラスを中心に二人寄り添う王子とシンデレラ。
 その横で。
「ちょっと和田さん! そんな事ができるんなら私の体も戻してよ!! 私がんばったんだからっ! そのぐらいのお礼したって当然でしょが!? こらっ!!」
 消えてしまった大妖精を追いかける様に、ぶんぶくが飛び跳ねていた。

 その後、シンデレラと王子は慎ましく結婚の式を終え、末永く幸せに暮らし。
 ぶんぶくは縁結びの神様として、その国で隠神刑部(いぬがみぎょうぶ)として祀られるのでありました。
 おしまい、おしまい。

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