小説

『REBOOTER / リブーター』結城紫雄(『変身』カフカ)

「にいに、部屋でいっつも何してるの?」妹の玲の声。
「PCのお勉強してるのよ。資格とかないと就職できないしね」
「本当かなあ」玲の疑問は当然である。
 でもまあ、とカズトは思った。母親が喜んでいるのは良いことだ。

「カズト、野球しようぜー」
 白石がドアを乱暴に開けた。カズトという玩具を見つけてからというもの、白石は大下家に入り浸っている。ブルジョアでも底辺でも、ニートは暇なものと決まっているのだ。
「野球はしないし、人ん家のドアを勝手に開けんな」
 カズトが振り向いた瞬間、その目が女性の姿をとらえた。妹だ。
「にいに?」
 ドアの向こうに玲がいた。マズい、不覚、今日は祝日か。
「玲、違うんだ、これは」
「すごい、仮面ライター旧一号じゃん!」
 玲が駆け寄ってきてカズトの肩をぺちぺちと叩く。
「すごーい、にいにどうしたのこれ、やばいマジリアル!ちゃんとベルト動いてるし、にいにが作ったの?」予想外の反応にカズトも白石もつっ立ったまま動けない。
「それはその、あの」白石に目で助けを求めるが、黒目のない今のカズトにアイコンタクトは難しい。
「そ、そのスーツ僕が作ったんだよ」ナイス白石。「次のコスプレイベントに着ていこうと思ってさ。フヒヒ」
「あ、白石さんお久しぶりです」
「中学校の時以来だねー、いやー大きくなっだもんだブヒヒ」
「白石さんすごーい!」
「玲ちゃんにもコスプレ衣装作ってあげるよ。いいレイヤーになれると思うなあ」
 白石のお陰で一難去ったが、次はこいつが一難だ。カズトは白石を押しのける。
「んで、旧一号だっけ?お前よくライターなんて知ってんな」
「そりゃあ知ってるよ。『仮面ライターカブキ』の水嶋田ヒロシとか『仮面ライターフォース』の福島蒼郎太とか」

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