小説

『生まれたままの姿』多田正太郎(『北風と太陽』『オンドリと風』『風の又三郎』)

どちらの先生も作品をよ。
沢山残したのは、同じだけどな。
そうか! 今気づいたぞ!
それで、お前も。ああ、気になってよ。
だけどよ、違うんじゃーない。えっ?
だって、お前さぁ、自分で書いてる?
いや。だろ。ああ、自分で書いてないな。
だろ、ならよ、お前の言う、旅立ちか?
ああ、そういうシーン、あったとしてよ。
お前の場合は、シンプルでないの。
そうも、思うんだけど、よ。思うけど?
いや、おこがましいよ。おこがましい、だと?
ああ、自分で書いたわけでなくともよ。
ちゃんと、書かれてよ、いるのかって?
そのことが、本当は気になってよ。
きっと責められたり、散々、詰られたりな。
書かれた主役たちからよ。
いいんでないの、それも、ありだろ。
あり、なぁ。ああ、ありだ、自信もてよ。
自信なぁ。ああ、そうよ。
参考までに、よ、書けてない話ったら?
あの、話。あの話? そう、あの・・。
まてまて、あの、って言ったな。
あの、ってよ。えっ、どうした急に?
その、あの、から始まったんだろ。
それなのに、あの、かよ!
おいおい、なに、いきがってる、んだよ。
いきがってる、だとー、俺が?
そうよ、急に、こだわり出したぜ。
へー、俺が、こだわり出しただと。
まぁ、そうかも、しれんか。だろ。
なんかよー、人間の世界も、な。
大変だなぁってな、急に思えてよ。
そう、思うか? ああ、思う、思う。
だってょ、旅立ち、目の前にしてな。
最期の言葉、とか、までだぞー。
生まれたままの姿に、されてよ。
生まれたままの姿? 
丸裸よ。ああ、そういうこと、な。
そうよ、丸裸にされてよ、残酷でない? 
プライバシーも、なにもなぁ。
ああ、なし、だな。でも、そうでもしても。
先生方の最期から、よ、なにか見出したい。
その必死な気持とかも、よ。
人間界でのなぁ、苦悩というのか。
分かる、そんな気もするぜ。ああ。
そうか、生まれたままの姿なぁ・・。
俺たちも、生まれたままの姿、さらす?
無理、無理、まだまだな。人間には、よ。
風の俺をよ! 生まれたままの姿にだと。
太陽のお前をよ! 生まれたままの姿にだと。
無理! 無理だって!
なんぼよ、量子コンピュータ。
これ、完成しても、な。

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