小説

『生まれたままの姿』多田正太郎(『北風と太陽』『オンドリと風』『風の又三郎』)

ああ、分かったよ、黙るからよ。

最愛の息子だ。
何日も何日も、嘆き悲しんだ。
その落胆状態は、7年も続いた。
その間、吹くことを、忘れてしまうほどだ。
なんと、クモが。
どうして、クモ、なのかって?
俺にも、分からんが、とにかく、クモの巣が。
世界中を、覆いつくしてしまったのよ。
息苦しい! ウシとか、ウマとかニワトリ。
次々とお陀仏よ。この現状に、思ったもんよ。
風さんよー、元気になってよー!
でないと、おしまいだー! 
みんな、みんな、願ったさー。
でもな、深刻な落胆状態の、風さん。
どうやって? 元気に、吹いて、もらえるか?
ある日、オンドリが、風さんの前に、な。
そして、言ったもんさ。僕の子供はさ。
毎日、毎日、たくさん生まれるよ。
だけどね、すぐに、いなくなるよ。
コケコッコー! でも、ほら、こんなに元気!
コケコッコー! コケコッコー!
風は、一気に吹き出した!
あっという間に、木の葉、サラサラ。
花々が咲き誇り、みんな息を吹き返えし。
めでたし、めでたし、ってー話さ。
おお! ひさびさにいい話だ!
だろ、こんな感じのが好きなんだろ、お前よ。
そうだなぁ・・。おっ、不満かよ。
いや、不満とかでなくて、よ。何だよ? 
子供たちが、毎日、毎日なぁ。
子供たちが、毎日だと? 
ああ、すがたをよ。オンドリの話だな。ああ。それがどうした? サラリとよ、納得して。
多分食われたわけだろ。
目玉焼きとか、ゆで卵とか・・。
死んだわけだよな。
死んだら、何処に、行くんだろなぁ?
胃袋の話でないぞ、この場合。
どう思ったんだろー、つてな。
あの宇宙卵の伝説とか、思い出したりしてよ。
お前なぁ・・。

♪わたしのお墓に佇み泣かないでください。
わたしはそこにはいません・・・。
わたしはふきわたる千の風。
わたしは死ななかったのです。

死ななかった?
さすが、千の風だよなぁ。
お前なぁ、それは比喩ってーもんだぜ。
比喩だと? ああ、置き換え。置き換え?
ほら、死って、受け入れ、がたかったり。

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