小説

『祈り』多田正太郎(昔話『雨乞い』など)

ハーイ! 上映が始まった。

昔々、ある暑い暑い、夏。
日照り続きで、井戸も喉も、カラカラ。
水がないのだから、作物も全滅しました。
村のカッバたちは、死を予感し始めました。
必死の思いでの、雨降れ! 雨降れ! 
でも、一向に降る気配はありません。
そんな村、勿論、カッパの村に。
ひょっこりと、人間が、やってきました。
悪さに、悩ませられてきた、村のカッパ。
殺気立ってたし、殴る蹴る、ボコボコです。
でも、どういうわけか、逃げ出さない。
それどころか、なんとなんと。
ボコボコにされたのに。
雨乞いを、させてくれって、頼んだのです。
70パーセントが水、そんな人間の体。
雨、必要だし、もしかして。
降らせるかもしれない、ということに。
瀕死の人間は、天の神さまに。
祈りました、必死に! 何日も何日も。
それが、なんと通じました!
雨が、大雨が、降った!
人間は、天を仰いで、神さまに、お礼を。
そして、満足そうな顔で、死にました。
ある日、一人の旅のカッパの坊様が。
一部始終を、村のカッパから聞きました。
そこで、おもむろに話し出しました。
カッパになりたがっていた、人間の話を。
生まれ変わって、村に、カッパとなって・・。
カッパの坊様の、この話を聞いて。
人間が住んでた、湖畔に、祠をこしらえて。
いつまでも語り伝えました、と、さ。

面白かったかー!

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15