小説

『祈り』多田正太郎(昔話『雨乞い』など)

えーっ、雨乞いが? 命がけかよ?
ああ、命がけの話が、あってよ。

昔々、ある暑い暑い、夏。
日照り続きだ、井戸もカラカラよ。
喉もだ! まぁそれは当たり前か
水がないから、作物は全滅よ!
村人たちは、死を予感し始めた。
必死の思いで、雨降れ! 雨降れ!
一向に降る気配はない、そんな村に。
ひょっこりと、カッパが、よ。
いたずらに、悩ませられてきた村人。
殺気立っていたし、ボコボコよ。
どういうわけか、逃げ出さないのよ。
それどころか、なんとなんと。
なんとなんと?

ハハハハハ、そうせかすなって。
現役引退、時間だけは、タップリと、な。
こうして、あちこちに、旅歩きよ。
まぁ、そんなところだけど、よ。
それとこれは、よ、違う、べさー。
北の出の、お前よ、もっと大陸的でないの?
なんか、こうボーッと、というのか。
ああこれ、のんびりしてる、つてーよ。
そういう意味、誤解のないように、な。
ごちゃごちゃ、何だよ!
かえって、誤解しちゃうだろ。
そういう言い方ってよ、普通、わよ。
いいからよ、続けるぞ、それがいいだろ。
ああそう、よ、続きだ、続きだ。
えーと、どこからだったかなぁ。
ボコボコよ、だけど、逃げ出さない。

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