小説

『Okiku_Dool』植木天洋(『お菊人形』)

 人形の髪が伸びたかどうかはわからない。ちょっと奇妙な体験だった。神社とかお寺においてもらって、名物みたいにしてもらったらよかったのかも?とも考えたけれど、和紙を剥いで人形を取り出すことを想像することはできなかった。
 彼は髪が短くなる人形のことなどすっかり忘れたように仕事に集中している。私も仕事をしなければ。
 それきり人形のことはほとんど忘れて過ごした。たまに、ふと、ふいに、そういえば髪が短くなる人形があったな、と思う程度で、やっぱりすぐに忘れる。髪が伸びる人形に対して、髪が短くなる人形は前者ほどのインパクトがなかったのだ。それはそれで面白い発見だったと思っている。
 でもそれだけだ。

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