小説

『Cinderella shoes』植木天洋(『シンデレラ』)

 心の中で思いながらもそれはかすかなもので、魔法のようにパッと目の前に赤いエナメルブーツが現れないかと期待してしまう。
 どうにかして手に入らないだろうか。
 何度目になるだろうか、メンズフロアにいってみると、エレベーターを出たすぐのあたりにいた店員が私に気づいて、にっこり笑った。
「こちらのパンプスはいかがですか?」
 え? パンプス? しかもメンズフロアで?
 薄茶色の靴箱を持って、坊主にTシャツ、ネックレス、ジーンズの、少し厳ついけれど人懐こい笑みを浮かべたスタッフだった。
 戸惑いながら彼が持った靴箱をのぞき込むと、茶と濃い茶のツートンで、切り替えとベルトの装飾が斜めにあり、その色合いと質感で一発でブランドがわかった。
 そして、頬にかあっと熱が上がった。
 このブランドの靴は、ショートブーツ、ウェッジソール、低めのウェッジソール二足、チャンキーヒールのショートブーツを持っている。
 シンプルで、センスが良く、履きやすく、頑丈なデザイン。元々登山靴を作っていた老舗メーカーなので、とにかく歩きやすさには信頼がおける。ヒールが高くても安定していて、足が疲れにくい。
 一番のお気に入りのブランドの、しかもものすごく素敵なデザインのストラップ付きパンプスを差し出されて、一目で惚れた。
「あの、試着いいですか?」
 頭がぼうっとして、導かれるようにそう言っていた。
 スタッフが用意してくれたパンプスはサイズがぴったりで、足を包み込んできつくなくしかし足をちゃんと包み込んでサポートする。快適な履き心地は、さすがとしかいえない。
 しかも、めちゃくちゃ可愛い。
 一気にテンションがあがる。
 追いついてきた彼がそれを見て、笑う。
「ああ、それ、いいね」
「うん、これめちゃいい」

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