小説

『宵待男』室市雅則(『宵待草』竹久夢二)

 ただやはり頭がぼうっとしてしまいます。
 熱と嬉しさが気持ちを浮き足立たせ、ナチュラルな状態で夢見心地になっています。
 そうやっていますと少し早めに看板の回収係さんがやってきました。
 風が強いので早上がりだそうです。
 看板を返して、いつもの交差点に向います。
 熱でふわふわとしています。
 足取りも彼女に会える嬉しさでふわふわとしています。

 いつもより少し早く着きました。
 まだ空は明るいです。
 僕は夜を待っています。

 待宵草が彼女と初めて会った時と同じように黄色い花を半分咲かせています。
 そろそろ彼女が着く頃でしょうか。
 待つことに慣れている僕でもそわそわしてしまいます。
 人が通るたび、車が通るたび、自然と体が反応してしまいます。

 刻々と時間は過ぎ、待宵草の花も次第に大きく開き始めています。
 まだ彼女は現れません。
 どうしたのでしょうか。
 今日も僕の勘違いかもしれないと思い始めました。
 では、『弥の明後日』の次の日は何と言うのでしょう。
 きっと『五日後』とそのまま言うのでしょう。
 本当に『いつかご』と彼女は言っていたのでしょうか。
 ちょっと違うような気もして、分からなくなります。
 もしや『いつかご』ではなくて『いつか会おう』だったのでしょうか。
 彼女はロマンチストですからそんな気もして来ました。
 『いつか』はいつ来るか分かりません。

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