小説

『カンダタの憂鬱』poetaq(『蜘蛛の糸』芥川龍之介)

 午後の陽射しが全身を温かく包みます。カンダタは瞼を閉じました。拷問で受けた無数の傷が、慈光を浴びて癒えるようです。
 たちまち睡魔に襲われました。極楽の一時(いっとき)が地獄の万年を一気にとろかすのでしょう。カンダタは無垢だった幼時以来の安らかな鼾をかき始めるのでした……。

「お食べ」
 お釈迦様とは対照的なぽっちゃり系の御仏――観音様がバナナをカンダタの目の前に差し伸べます。空腹が慢性化しているカンダタはとっさにバナナを摑みます。
「お待ち、カンくん」
 観音様がカンダタの手をピシャリと叩かれると、いきなり皮をお剥きになり、そのぽってりと赤い唇で棒果肉をくわえられます。
「お母(か)ん?……」
 カンダタが訝しげに尋ねます。息子を「カンくん」と呼んでいたのは母親だけだったのです(ちなみに、妻子を棄てた父親は「おい」でした)。そんな母親の化身らしい観音様が、まるで風俗嬢のような真似をする――とても見てはいられません。そのくせ、勃起はしています。カンダタは実母にしゃぶられている気がして、「やめてくれ!」と観音様を突き放します。
「ほら。お食べよ」
 仏力でしょうか、カンダタの手をなんの抵抗もなく背後にホログラフィーのように貫通なさると、観音様は唾に濡れ光るバナナをカンダタに再び差し伸べられます。その果肉は口紅でピンクに染まり、しかも「亀頭」にくびれています。
「うえっ!」
 カンダタは顔を背けます。そうしてすかさず立ち去ろうとした時です。いきなり羽交い締めにされたかと思うと、ズボンの上から亀頭を肛門に挿そうとしてくるではありませんか。
「や、やめてくれ、お母ん!」
 カンダタは必死に抵抗します。が、さすが御仏、腕力は強く、カンダタは固くそそり立った亀頭にズボンの上から挿され続けます。穴が開くのも時間の問題です。
「おお母ん、頼む。もう親不幸はしねぇから……」
 その時です。とうとう尻が破れ、ズブリと肛門深くに挿さります――。

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