小説

『笑い顔の怪人』小笠原幹夫(『怪人二十面相』)

 これは、いまから考えると、学校を卒業する寸前に、ミワ子さんが可愛らしい女の児から大人の女の人に変化する、その兆しが現われていたのかもしれません。子どもが女になるというのは、毛虫が蝶々になるようなもので、面妖めんような現象であります。
 のちに、神田駅の近くの中学校に進んだミワ子さんが、在学中、二言三言セリフを言う少女役をつとめているのを映画館で見たことがあります。やがて中学校を終えたミワ子さんは、映画会社の採用審査に合格し、養成所の教育を受け、数人のニューフェイスといっしょに映画雑誌で紹介されたといううわさを聞きました。あのときの学芸会で怪人二十面相に扮したことが役にたったのでしょうか。

1 2 3