小説

『野ばら』化野生姜(『野ばら』)

「…ほら、その花みたいにだよ。」
そうして、旅人は老人の持つ野ばらを指さしました。
老人は、それを見ると少しだけ目を細めてから、助手席から宇宙船の下を覗きこみ見ました。そうして、老人は一言つぶやきました。

「いいや、あそこの花より美しい花は知らんよ…。」
野ばらは、石碑の周りで確かに枯れておりました。
しかし、老人にとってその花は、この星にある花のどれよりも、美しく見えたのです…。

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