小説

『野ばら』化野生姜(『野ばら』)

大きな星と小さな星の境に、一つの星がありました。
星はとても小さく、また資源も乏しかったので、二つの星の住人は星の面積を半分に分けると、お互いに兵士を一人ずつ送り国境として守らせることにしました。そうして、二つの星のあいだには、長いこと諍いがありませんでした。

「ふむ、この戦法はまた面白い…。」
白いシャツに青いズボン。肩に手ぬぐいをかけた老人は、立派なあごひげをなでると、盤上の立体映像に目を見張りました。
空は澄み切った青色で、遠い昔に建設された無人気象コントロールセンターによって現在は春の気候が再現されています。国境を定める石碑の周りには何株もの野ばらが生え、その側ではぶんぶんとミツバチが羽音を立てておりました。
そして、老人と差し向かいの位置にいて盤上をにらんでいた青年は、ふと顔をあげると、その野ばらを見やり、老人にたずねました。

「…この野ばらや虫はどこから来たものなのでしょうか?確か、私が話に聞いたところでは、ここはむかし、何も無い石ころだらけの星だったそうですが…。」

すると、老人はちらりと野ばらを見やってから、また盤上に目を移しました。

「なあに、ここは百年前に、どこぞかの金持ちの持ち星だったんだよ。当時はここも大きなお屋敷や色とりどりの四季の花や動物が他の星から持ち込まれては咲き乱れていたのだけれど、次第に家も落ちぶれてしまってね。いまじゃ、こうしてわずかな種類しか生き残っておらん。だが、しぶとい奴もいる。ここに残っているのもその一部だ…。」

そうして、横目で野ばらを見やる老人に、青年はしみじみとつぶやきました。
「そうですか。これは他の惑星からもちこまれた花なんですか…。」
そうして、何か思うところがあったのか、青年はしばらく黙って野ばらを見つめていましたが、ふいに、頭上で聞こえるプロペラ音に顔を上げました。

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