小説

『豆の行方』多田正太郎(『追儺』森鴎外、『ジャックと豆の木』)

 そして、バラバラと。
 無数の豆に。
「福は内、鬼は外!」
「鬼は外、福は内!」

「追儺」。
 わざわざ、表題、これにしたの。
 理由、あったんだろ。
《 悪魔に毛を一本渡すと、霊魂まで持つて往かずには置かないと云ふ、西洋の諺がある。》
 この諺、なんでだ?
 どこが繋がるんだよ。
「追儺」と。
 え、鴎外先生。
 そうかそうか!
「福は内!」
 これが言いたかったんだろう、な。
 内にある、と。
 たっぷりと、欧州体験した。
 明治文化人。
《 悪魔に毛を一本渡すと、霊魂まで持つて往かずには置かない・・》
「福は内!」
 いや、もっと?
 霊魂えぐる、悪魔。
「鬼は外!」
 飲み込まれるぞ。
 外からの悪魔に?
 それで。
「追儺」?
 この作品の、名さ。
 物書き、としての、手の内。
 告白したり。

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