小説

『面白い勝負』℃(『平家物語』)

 そして、対決の場面。
 小舟の男が投げたボールが、浜へと一直線に飛んでいき――
 ここで、一回目とは違う展開が待っていた。
 豪速球はあろうことか、鉢巻の男の脇腹に命中する。時速一六〇キロ以上なので、よける暇などない。鉢巻の男はバットを落とすと、体を曲げて悶絶している。
 直後、両軍の間を激しい怒号が飛びかった。
 この事態、声だけで収まるはずもなく、浜にいた男たちが小舟へと殴りかかっていく。
 それに対して、沖にいた船団も小舟の方へと急接近してきた。
 さぁ、乱闘の始まりだ。
 これは、さっきの映像の別バージョン。
 男たちが殴り合う様子をほんの少し流してから、ドーム球場の巨大スクリーンに、次の文字が現れる。

   何が起こるか、わからない。
   だから、「野球」は面白い。

1 2 3 4 5 6 7 8