小説

『不自由な幸福』長月竜胆(『アザミを食べるロバ』)

「まだ理解できていないようだね。君だって言ったじゃないか。道端の草花を食べるだけなら、人間との協力は不要だって」
「……何?」
 ぽかんとする鳥に、ロバは不敵な笑みを見せる。それから、「つまりね……」とゆっくり語り始めた。
「人間と共存関係にある僕は、彼らから狙われることはないし、怪我をすれば治療だってしてもらえる。例え、今の君のような立場に置かれたとしても、何ら脅威に感じることはないわけさ。だけど、人間と共存関係にない君は、そうはいかない。さっき君は笑ったけど、これで共存することの意義が身に染みて分かったろう」
 鳥は全てを理解したが、時すでに遅し。その後、哀れにも人間たちの夕食に並ぶことになった。

 不自由でも保障を得られる環境の方が、時に自由であることよりも恵まれている。

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