小説

『ウェンディとネバーランド』あやもとなつか(『ハメルーンの笛吹き』『ピーターパン』)

私ウェンディ・ダーリングはハメルーンの街におばさん夫婦と従姉妹のナナと弟のジョンと一緒に住んでいる。私とジョンのお父さんとお母さんは私達がまだ小さい頃に亡くなったけど、おじさんとおばさんが引き取って育ててくれている。街のみんなは「可哀想だね。」って言ったけど、おじさんとおばさん私達姉弟にもナナと同じように優しく、そして時には厳しく接してくれるから全然平気だし、寂しくなんてない。先月15歳になったナナは優しくて、私の自慢の従姉妹だ。弟のジョンは人見知りで、5歳になった今でも私の後ろをよく付いて来る。ジョンは引っ込み思案だけど優しくていい子だから友達も多い。最近では友達のマイケルと秘密基地を作っているらしい。おじさんとおばさんとナナとジョンと私と。みんなで囲む食卓は明るくて楽しい。私は毎日幸せで、これが当たり前だと思っていた。

けれども、今年の春頃から街に異変が起き始めた。最初のうちは街の誰も気に留めなかった。ただ、以前より頻繁にネズミが出るようになった、それだけ。特に気にすることもないと思っていた。おじさんはネズミに噛まれた家具を直し、おばさんはネズミ捕り器を用意して、ナナはおばさんの目を盗んでこっそりチーズをネズミにあげて、ジョンはそんな事などお構い無しに秘密基地に通った。けれど日が経つにつれネズミは数を増し、被害も大きくなっていった。街の人々はネズミの被害に頭を抱えた。街全体でネズミ駆除に取り組んだけれどネズミの数と被害は増えるばかりだった。

そんなある日、街にカラフルで奇妙な格好をした1人の男がやって来た。ただ、その人は仮面を被っていたから、男か女かははっきりとは分からなかったけど、身長が異様に高かったから私は男の人だろうなって思った。男は長袖長ズボンで手袋をして、おまけにピエロが被るような面白い帽子を被っていて肌や髪が全く見えなかった。男は街の中央広場で大道芸を始めた。たまたまおばさんとナナと一緒に買い物に来ていた私は大道芸の観衆に加わった。男の大道芸は本当に素晴らしくて、見ていて心臓が飛び出しそうなほどドキドキした。
ある程度人が集まってくると男は近くの小枝を拾って地面に文字を書き始めた。
『お困りのようですね。もしよろしければ私がネズミを退治しましょうか。もちろん、それ相応の報酬は払ってもらいますが。』

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