小説

『音がきこえる』Mac(『トカトントン』太宰治)

「快速走ってないですからね、電車」
 じゃあ別に新幹線使えばいいんじゃないでしょうか。時は金なりの権化ですよね、新幹線って。
「でもって一番厄介なのが帰ってくるときだ。タイミングを間違えると相生駅でダッシュするハメになる」
「はあ」
「ま、こればっかりは実際利用してみないと意味わからんだろうな」
 そもそも一体何の用事で訪ねていらしたんでしょうか。
「で、ヒマならどこか遊びにいかない?」
「はい、いいですよ」
 まあ、そんなとこだろうとは思ってましたけど。お隣さんということで、気が付いたらどこかへ遊びにいくような仲になってしまっていました。とことこと身支度を整えます。
「どこ行くんですか?」
「うーん、ショッピングでも?」
「そうですか。じゃあ、行きましょう」
 ショッピング程度ならこんなもんでいいでしょう。ちゃんと鍵をかけます。戸締りよーし。
「あ」
「あ、こんにちは」
「よっ」
 二〇一号室の前を通り過ぎるとき、ちょうど佐伯さんが出てきました。
「何? どっか行くの?」
「佐伯さんもですか?」
「まあ、買い物にでも行こうかと」
「じゃあ一緒に来る?」
 なんだかんだ、佐伯さんとも仲良くやらせていただいている気がするので、私としてもそれは問題ではありません。
「いや、いい」
「やる気ないのな」
「まあ、またうるさいから」
 うるさいとな?
「お前まだそんなこと言ってんの?」

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