小説

『王子さまの手紙』和織(『星の王子さま』)

 地理学者の星は、そこら辺にあるどの星よりも大きく立派でした。三人は早く地理学者と話をしたかったのですが、地理学者はテーブルで難しい顔をして何かを読んでいます。やがて、しびれを切らした王さまが、声をかけてしまいました。
「いや、うん、ちょっと、ききたいことがあるのだか・・・」
「しっ!後できいてやるから、もう少しだけ静かにしていてくれ」
 地理学者にそう言われて、王さまはさっさと引き下がりました。他の二人も、これはしばらく無理だと判断して、みなバラバラに、その大きな星を、ぶらぶらと見物しました。そして次に三人がテーブルのところへ戻ってきたとき、地理学者は何やら身支度をしていいました。
「どこかへでかけるんで?」
 実業屋が言いました。
「や、わしは、探検家になるぞ!」
 地理学者は言いました。
「探検家?」
「今手紙を読んでな、いや、今まで読んだどの読み物よりもすばらしかった。わしは探検なんてするもんじゃないと思っていたがな、これを読んだら、もう旅に出ずにはいられん。ところで、おまえさんたち、一体何の用だね?」
「ここへ、金の髪をしたぼうやが来ませんでしたか?」
 うぬぼれ男が言いました。
「へえ!おまえさんたち、あの子を知っとるのか?ああ、ああ、来たとも。あの子がここへ来たから、わしは探検家になるのだ」
「それは一体どういうことだね?」
 王さまが言います。
「どうも何も、あの子に地球へ行くように言ったのはわしでね、だからあのぼうやはこんなにすばらしい手紙を書くことができたというわけだ。だからまあ、結局はわしがわしを探検家にしたのとかわらんがな。ああ、そうそう、その前に点燈夫の問題を解決せにゃならん」
「点燈夫って、向こうのやたらと小さな星にいる?」
 うぬぼれ男が訊きました。
「ああ、そうだとも。あのぼうやが、奴にひどく同情しておるんじゃ。ここに書いてある」
 そう言って地理学者は、手紙を手にとりました。

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