小説

『王子さまの手紙』和織(『星の王子さま』)

ツギクルバナー

「わしの家来が来なかったか?」
 うぬぼれ男の星に着くと、王冠と毛皮をととのえながら、王さまは言いました。
「さぁ、知りませんね」
 うぬぼれ男はしょぼくれた様子で言いました。この男、以前は誰かが来ると、その人に感心されようと必死になったものですが、今ではすっかり落ち込んでしまっています。
「変だな。確かにこっちの方へ進んで行った筈なんだが」
「来たのは、ぼうやだけですよ」
「ぼうや?」
「金の髪のぼうやです。もうずいぶん前に一度」
「金の髪?ああ、それだそれだ!で、どこへ行ったんだ?」
「え、あのぼうや、王さまの家来だったんですか?」
「そうだそうだ。どうしてもと言うので、家来にしてやった」
 それは嘘でしたが、王さまはさも得意そうに言いました。
「あれ、でも王様、自分の家来の行った先もご存じないんで?」
 うぬぼれ男にそう言われ、王様はどぎまぎしましたが、やがて怒った様にこう言いました。
「わしが、使いに出したんじゃ!しかしなかなか戻らんから、わざわざ探してやっているんじゃ」
「なら王様、ぼうやに会ったらもう一度ここへ寄るように言ってくれませんか?」
「どうしてだ?」
「おれあの子に、「人に感心されることが、なんで、そうおもしろいの?」って言われてから、もう何が何だかわからなくなっちまったんですよ」
 うぬぼれ男は、手の中でぐちゃぐちゃになってしまったぼうしに目を落としました。それはうぬぼれ男が、自分に感心してくれる人にあいさつするためのぼうしでした。
「ほう、なら、おまえさん、わしと一緒に来てはどうだ?」
 王さまはなるべくなんでもないふうに言いましたが、内心ひとりでは心細くて、ぜひともうぬぼれ男に一緒に来て欲しかったのです。
「でもおれ、今はもう何もやる気がおきないもの」
 うぬぼれ男は言います。

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