小説

『オオカミ被害者の会』Rain(『赤ずきん』『三匹の子豚』『オオカミと7匹の子ヤギ』『オオカミ少年』)

 むかしむかし・・・でもない森の中奥深く。真夜中の暗い場所でとある一族の会合が毎年行われる。その一族の名はオオカミ一族。
「よぉ、お前も生き残れたか」
「お疲れさん。毎回毎回やる度に頭数が減っていくな」
 ぞろぞろと集まってくるオオカミたち。どこかみんなの様子は薄暗く、うつむいた表情をするものが多い。
「またやられたか」
「うちの兄ちゃんも・・・ひどい仕打ちだったぜ」
 全員が集まったところで切り株の上から大きな一匹のオオカミが叫びだす。
「おし。お前ら! オオカミ一族の会合を始めるぞ!」
 叫びと同時に一族の遠吠えが、森林中に大きく轟く。鳥や小動物たちは逃げ出し、辺りに静寂が訪れた。
「いいか! 今年も前年に比べて俺たち一族の頭数が一割以上も減ってやがる」
 大きなオオカミのボスの宣告に、驚く一同。泣き崩れ始める者もいれば、怒りに震えている者もいる。
「理由は俺たちをやっつける童話の読まれる回数が増え始めたからだ! いろんな話に出されては俺たち一族、見るも無残にやっつけられ続けている!」
「許せねえ!!」
「なんで俺たちだけ!!」
「まあ落ち着けお前ら! だから今夜は、今まで被害にあった者たちの話を、ここで聞いてもらおうと思う! 前に出ろ!」 
 ボスに呼ばれて切り株の上に第一に上がったのは、怒りに震えているかなり強そうなオオカミだった。
「俺の兄貴は、人間を食おうとしたんだ! とっても立派だったんだ。俺もずっと尊敬してる兄貴だったよ。すごく頭がいいからな」
「こいつの兄貴は、群れの中でもかなり優秀な奴だった。ボスの俺の跡継ぎにもぴったりなやつだった」
「なのに! 人間の野郎がおなかを掻っ捌いて、兄貴が食べた人間二人を出しやがったんだ! さらに代わりに石を詰め込まれて、兄貴は、だまされて川に・・・くそ!!」
「だからみんな聞いてくれ! 赤い頭巾をかぶった女の子がいたら、絶対に食おうとするなよ! 罠だからな! そいつについてったら最後、溺死だ」

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