小説

『姫とHIME』NOBUOTTO(『かぐや姫』)

 博士は愉快そうに笑った。ジェシーは大きな声で笑う人を生まれて初めてみた気がした。
「そろそろ、国家管理局がこの研究室に来るでしょう。ジェシーさんは何も知らなかったことにして家に戻って下さい」
「博士は、これからどうされるのですか」
心配そうにジェシーが聞いた。
「今後、この国で生きていくのは大変そうですね」
 監視モニターに映っている地球を博士は見た。
 ジェシーが研究室から出ようとした時に後ろから博士の声がした。
「ジェシーさんは、これからどうされますか」
「今は、混乱していて考えがまとまりませんが、少し落ち着いたら両親を捜して会いに行こうかと思います。また、HIMEのように婚約者と話しをしてみようかと…」
「そうですか」
 博士はまた高らかに笑った。
「私の20年の研究は無駄ではありませんでした。ジェシーさんありがとう」
 博士は宇宙船へと向かっていった。

1 2 3 4 5 6 7 8