小説

『マッチ売りの少女とぼく』霜月りつ(『マッチ売りの少女』)

「マコトちゃん、昨日、寝ながら笑っていたわよ」
 朝になってママがおかしそうに言った。
「なにか楽しい夢をみていたの?」
「夢じゃないよ」
 マコトは言った。
「夢だけど、夢じゃないんだ。ママ、今日幼稚園の帰りに図書館に行ってもいい?」
「いいわよ、何か読みたいの? 消防車の本かしら。鉄道の本かしら」
「お話の本がいい」
 マコトはにっこり笑った。
「たくさん、読むんだ。いつかあの子に話してあげなきやいけないから」

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