小説

『Grimm and Charles』ナカタシュウヘイ(『不思議の国のアリス 赤ずきんちゃん』)

 「ねえ。狩人さん。どうしてお祖母さんはここにいらっしゃらないの」赤ずきんは聞きました。
 「あぁ。赤ずきん。お祖母さんがここにいないのはきっと狼にでも食べられてしまったのかもしれない。しかし狼の、お腹を調べてみたけど、そこには誰もいないんだ。だから赤ずきん、お祖母さんは生きている。でもどこかへと行ってしまったんだ」
 「まぁ、それはなんてこと。でもお祖母さんはご病気よ。どうやってここからいなくなってしまったの。歩くことも精一杯だと聞いていたのに」
 「それは私も心配だ。だがまずは狼の死体をどうにかしよう。近くに墓地がある。そこは人を埋葬する場所だ。でもその隣の空き地を使うことにしよう」
 狩人は血にまみれた毛布で狼を包み、両手に下げました。出来ることなら、自分で仕留めたかったと口漏らしました。確かに狩人なら、狼の一匹を仕留めることなど可能だったでしょう。
 アリスと赤ずきん、それからハートのジャックは狩人の後をついていき、二つ程大きな十字路を抜けた後、共同墓地のある広場へとたどり着きました。共同墓地の簡易に作られた土の山と十字架が散らばった墓地の隣にある、まだ土の硬い、草がまばらに生えた場所をみんなで掘り起こしました。石や、穴掘り専用のやや太い木を使って、狼を埋める穴を掘りました。
 ようやく穴を掘り終えた頃には、夕刻の陽が差し始めてきました。狼を毛布のまま、穴に入れ、柔らかくなった土を被せていきました。しかしその途中、アリスは聞きなれたような、聞きなれないような声を聞きました。
 「待たれよ」みんな一斉に振り返ると、そこにはグリフォンが翼を下ろし四足でそびえるようにいました。これから何が始まるか、アリスにはわかっていました。そう裁判です。しかし誰が裁判にかけられるのか、気になり訊ねてみるとそれは狩人だとグリフォンは告げる。
 狩人は当然疑問を口にします。しかしグリフォンは「これはもう始まってしまったことなのです」と狩人を正式に起訴する裁判の証明書を見せ、半ば強制的に、狩人は、他三人はその証人として、裁判所へ連れてゆかれました。
 裁判所は、玉座の前で行われました。裁判官役の王様たち、陪審員の動物たち、そして布告役にはなんと赤ずきんのお祖母さんがいるではないですか。赤ずきんは驚きを口にしますが、裁判官に注意を受けます。余計な口は慎むようにと言われ、一旦この場は静かになります。
 赤ずきんのお祖母さんは見るに元気で、悠長と言っていいほど、軽やかに狩人の罪状を読み上げました。王様達は静かに頷き、判決を静かに語り合っていました。狩人がいくら無罪を言っても聞き入れられず、証人である赤ずきん、アリス、ハートのジャックの証言も何か役に立ちそうにはありません。

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