小説

『兄妹が産んだ誓い』梶野迅(夏目漱石『吾輩は猫である』『浦島太郎』)

「ふぅ、そこまで知っているのなら。話そう。」
「ありがとう。」
「今、我が家の近所の環境がガラッと変わっている。昔に比べると一言じゃ言い表せないくらいに。私とあなたのお母さんは今から大体七十年位前に二度とあなたのお兄さんのような悲しい子どもを作らないと誓いを立てた。それに近所の人も応援してくれはずだった。しかし、七十年もなると各家の経済状況や家庭環境が一変する。家族を守るために色々な手を打ってくるものが現れた。それが多くなってかつての町の環境が悪くなってきている。というのが私の考えだ。」
「私の具合がどんどん悪くなっていくのは?」
「それは・・・」
「時代の流れってことなの?私の力じゃどうにもならないってことなの?」
「そんなことは言ってない。」
「じゃあ、なんで。」
「まだ分からない。」
「いつ分かるの?」
「分からない。」
「今、お父さんが動いていることが正解ならこのままでダメならまた『戦争』という名の子が生まれる。そういうことでいいの?」
「ああ、それで間違えないと思う。」
「これだけは約束して。私はどんなに調子が悪くても笑顔で耐えるから、『戦争』という兄弟はこれ以上増やさないで。」
「分かった。ね、母さん。」
「ええ、頼もしくなったわね。」
 両親はまた一つ誓いを立てた。
「『平和』という名の娘を永遠に守ろう」と。

1 2 3 4 5