小説

『めぐりめぐって』長月竜胆(『まったくほんとう!』)

 そんなある日、一羽のハトがニワトリたちの住み家を通りかかる。ハトはニワトリたちの姿を見ると、感心して呟いた。
「ニワトリさんたちは、みんな羽が綺麗に揃っているな。ニワトリさんたちの世界では、争い事がなくて平和だということか」
 感動したハトは、そのことを皆に話して回った。また、決闘している鳥たちを見つけると、すぐさま間に入り、ニワトリたちのことを挙げて平和を訴える。そうして、徐々に鳥たちの世界から争い事は減っていった。それ以来、ハトは平和の伝道師とされ、ニワトリは飛べないながらも鳥の世界で一目置かれるようになった。結局、ニワトリに対する勘違いによって争い事が増え、同じくニワトリに対する勘違いによって平和がもたらされたのである。もちろん、ニワトリたちはこのことを知らない。

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