小説

『歌えメロス』ノリ・ケンゾウ(『走れメロス』)

 外はもう日が上がる直前、セリヌンティウスが今にもバイトリーダーに判を押されようとしているところに、メロスがばたばたとM屋に入ってくる。
「待てバイトリーダー!ここにメロスが戻ってきたぞ!」
 その声に、振り向くセリヌンティウスとバイトリーダー。セリヌンティウスの目には涙が浮かんでいる。
「セリヌンティウス、私は君を欺いてしまうところだった。どうか私を殴ってくれないか」
 セリヌンティウスは、涙を溜めて訴えるメロスの頬を思い切り叩いた。
「メロスさん、私のことも殴って下さい。一度だけ、あなたを疑い、あのクソサラリーマンのボケが、何が超一流だ、と暴言を吐いてしまいました」
 意外な程、メタメタに悪口を言われていたことに驚いたメロスは、「何だお前クソニートのくせに、調子に乗んなボケ」と言って、セリヌンティウスの頬を思い切り殴った。そうして涙を流しながら抱き合う二人。二人の固い絆に、バイトリーダーは、
「何と素晴らしい。あなたたちは、私との勝負に勝ったのです。私に人を信じる心を、蘇らせてくれた。どうか私も、仲間に入れてくれませんか」
 こうして、結局メロスだけでなくセリヌンティウスも含め、仲良くM屋で働き始めた三人。活気を取り戻す店内。売上はみるみる上昇。やがて日本一の店舗に。会社から特別ボーナスを貰い、気を良くした三人は綺麗さっぱり店を辞めてしまって、世界一周の旅へと仲良く三人で飛び立って行ったことなど。

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コメント
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    みんながイメージしやすい開かれた着想。若手お笑い芸人さんのネタみたいな疾走感があって素敵です。(9月期優秀賞受賞者:紅緒子)

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    現代的で俗っぽい“牛丼屋”で、古めかしい断定口調で強めに言い合う。何とまあ、バカバカしいお話だろうか(笑)。気に入った。映像化求む。(9月期優秀賞受賞者:須田仙一)

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    古風な文体に、我道をゆくメロスや取り巻く状況がどこかシュールで面白かったです。「クソニートのくせに、調子に乗んなボケ」で笑ってしまいました。(9月期優秀賞受賞者:二月魚帆)

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    誰もが知っている『走れメロス』を題材にしたのも面白いが、その最初の印象的な文「メロスは激怒した」を、とてもくだらない理由で使ったが素晴らしいと思います。やっぱり物語は、最初の掴みが一番重要ですので。こういった目を引く書き方を私もしてみたい…。(9月期優秀賞受賞者:襟裳塚相馬)

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    作品自体の面白さで考えるとどの作品も甲乙つけがたく、とても一つを選ぶことができませんでしたので、映像化との相性を基準とさせていただきました。本作の軽快なテンポ、ユーモアあふれる台詞回し、動的な展開は、映像化によってさらに面白さが増すだろうと思われ、是非見てみたい!と感じました。監督や脚本、役者によって作風がかなり左右される作品だと思うので、映像にした時にどんな仕上がりになるのかも楽しみです。以上の理由より、最終候補作品の中で最も映像化に向いていると感じたので、本作を選ばせていただきました。(第2回最終候補:木江恭)

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    走れメロスが忠実に現代に再現されている上に、一体どうなるのだろうかと新鮮な気持ちで読み進むことができました。(第2回優秀賞受賞者:吉倉妙)

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    映像になったら1番楽しそうだなと思いました。コミカルなメロスが見てみたいです。(第2回優秀賞受賞者:和織)

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    おもしろいの一言。読めば、わかります。メロスと現代が不思議とマッチして、おもしろさが加速していきました。超一流のスーパー営業マン、メロスが映像で活躍するところをぜひ見たいです。(第2回優秀賞受賞者:田中りさこ)