小説

『特異体質』小野塚一成(『ピノキオ』)

 あれはそう、小学4年の時だっただろうか。運動音痴な私は運動会が嫌で嫌で仕方なかった。朝、母親に仮病を使って運動会を休もうとしたのだが、子供の浅知恵などはあっという間にばれ、母親に「何で行きたくないの?」と問われた私はヤケになって「だって運動音痴なんだもん!知ってるでしょ?一生懸命走ってもどうせビリになるし、走り方が変とか笑われるし、だから嫌なの!行きたくない!運動会なんか!なくなっちゃえばいいのに!!」と一気呵成に素直な気持ちを連続で吐き出した。
 結局、母親になだめられ、運動会には出ることにしたのだが、学校に着くと仲良しのリッちゃんという子に、「あれ?リョウちゃん(私の名前は涼子なので)なんか今日ちょっといつもと違うね」と言われた。「え?そう?どこが?」「え~なんだろう?鼻かな?なんとなくだけど」
 その時は特別気にもせず「ふーん」くらいな気持ちだったのだが、トイレに行って鏡を見てみると、やはりリッちゃんの言っていたことは本当だったようだ。確かに昨日までの見慣れた自分の鼻とはわずかに違う気がする。ほんの少しだが高くなっているような気がする。
 このことを親に伝えたら、鼻の変化には気付かない上に「まあ、この子ったら大丈夫かしら・・・」みたいな怪訝かつ不安げな顔をされたので、それ以来人に相談することもできず、とりあえずこの体質とがっぷり四つ、どっしりがっつり向き合ってきたのだ。
 とはいえ悪いことばかりでもなく、面接や合コンの時なんかには印象を良くするため、無理やり鼻を高く(テレビで男前な俳優を見て「うわ、抱かれてー!」とか下品な発言をしたり、美人だから気に入らない女優を見て「おめー絶対性格悪いだろ?どうせ馬鹿みてーに男遊びしてんだろ?」とかみっともない暴言を吐いたり)して行ったり、実際それでおいしい思いもさせてもらった。たまに高くしすぎて整形疑惑を持たれたり、外国の方に知らない国の言葉で話しかけられたりもしたけど、別にそんなことは気にしない。
 そう、気にしなければならないことは他にあるのだ。

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