小説

『Dカンパニー』サクラギコウ(太宰治『グッド・バイ』)

 結城はテーブルの上に女の写真を4枚並べた。
「では、この3人はAプランで、1人はCプランで」
 結城は写真を3枚と1枚に分けた。
「ほう、1枚だけCプランをお望みというのは?」
 カブラギの質問に、結城が答える。
「この女は人妻だ」と1枚の方を指した。
 カブラギは「ほーう」と再び言いながら
「では、人妻の方は別れるのは簡単だと思われましたか?」
「お互いに拘束しない間柄だし、相手もいつもそう言っている」
「では、この方まで当社に依頼されなくても、結城さまが直接別れ話をしても納得なさるのでは?」
「長いんだよね付き合いが。もしゴネられたら面倒だし、4人全部まとめてお願いします」
 カブラギは少し微笑んでから
「承知いたしました。では結城さまからご提示いただきました資料と、こちらで調べた資料を検討しまして、4人分のプランをお作り致します」
「急ぐんだけど、どのくらいかかる?」
「大至急作成させていただきます」
「頼みます」
 ノックがした。同じ部署の女性社員が顔を出し結城に電話だと告げた。
「会議中だって言って下さいよ!」
 少し怒気の含んだ声で結城が言うと、女性社員は言いにくそうに
「申し上げたんですけど、お急ぎのようです」と付け足した。
「折り返すって言ってください」と女子社員に告げる結城に
「では結城さま、私はこれで失礼します」とカブラギが立ち上がった。そして
「バディーを一人付けさせていただきます」と付け足すように言った。
「バディー?」結城は、意味が分からず聞き返す。
「相棒のことです。計画が終わるまでご一緒いたします。女性です」
 女性と聞いて結城は気色ばんだ顔を少し和らげた。

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