小説

『モンキーアンドシザーズ』笠原祐樹(『猿カニ合戦』)

 「方法は分からない。けど、何か手がかりはあるはずだ」
 「あれから六年だよ?手がかりなんて…」困りながらウスキは言った。
 「そうだよ。今さら探すなんて無理だ。だいたい六年も放置してるような男だ。もしいたとしてもろくな奴じゃない」サルタが言った。
 「でもあの子が知りたがっているなら、探すのは俺達の義務だと思う。もちろん今後も俺達があの子を育てるのは変わらないけど、せめて生きてるのか死んでるのか、その確認くらいはするべきだ」
 「いっそのこと死んだことにした方がいいんじゃないの?」
 チュウバチのその言葉は一度は皆が考えたことでもあった。
 「俺もそれがいいと思う」サルタは同意したが、ウスキは黙って考えていた。
 クリヤマはその意見に反論した。「母親はもういない。それは事実だ。でも父親は違う。どこかにいるかもしれないんだ。それを知る権利が彼女にはある。残酷な真実とやさしい嘘。みんなはやさしい嘘を選ぶのか?」
 誰も何も言えなかった。どちらにせよ、六歳の少女にはあまりに重い現実なのだ。
 「俺は一人でも真実を探す。あの子はその真実を知りたがっている。ならそれを探して伝えるのも、義理の親の俺達のやるべきことだ」
 「あの子が傷ついても?立ち直れないくらいの傷を負っても?」とチュウバチは言った。横でサルタもうなずいた。
 「辛いけど、クリヤマの言うことに一理あるかもしれない。知りたいなら教えるべきかもしれない。あの子は賢くて強い子だよ。俺達がきちんと支えてあげればきっと乗り越えてくれるよ」ウスキが言った。
 「もし乗り越えられなかったら?一生の傷になったら?私達だけで支えられなかったらどうするの?真実なんてもうどうでもいいよ!」目を真っ赤にしながらチュウバチが言った。
 「落ち着けよ。俺達が言い合ったってしょうがない。分かった。じゃあこうしよう。まず父親を探す。彼女に伝えるかどうかはそれからまた考えよう」

 「そうして四人は父親を探すことになったの」いつの間にかマルガリータはなくなっていた。「マスター、同じ物を」

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