小説

『おとぎサポート』広都悠里(『一寸法師』)

 テレビを見て笑っていると露骨に親が嫌な顔をして「ちょっとは真面目に勉強しなさいよ」と言われる現実。
 あーあ、やってらんないぜ。人生ってつまらない。どうやって決めればいいの?
 進路希望調査書は未記入のまま。記入できる日は来るのだろうか?いや、書かなきゃならないんだけどさ。

 シルベがお前のことを探しているらしいぜ、という噂を聞いた。
「シルベ?」
「標道行。二組に途中編入してきたやつだよ」
「シルベミチユキ?なんで、そいつがオレのことを探しているわけ?」
「さあ」
 にやついている戸倉を「何だよ、白状しろ」と羽交い絞めにしたら「やめろよー、お前、背が低いからそういうことをやられるとマジで背骨が折れそうになる」と腕を振り払われた。
「一寸法師を探しているんだとさ」
「は?」
「一寸法師」
「誰が一寸法師じゃ」
「だっておまえ学年一、背が低いじゃん。いや、学校一だったっけ?」
「うるさい。まだ成長期だぞ。だいたい一寸法師って何だよ。指に足りない一寸法師、小さな体に大きな望、ってやつのことか?」
 思わず歌うと「おおすげえ、さすが一寸法師、自分の歌は歌えるんだ」と拍手された。
「いや、ちがうし。身長、指に足りてるから。そんでもってそこ、お笑いポイントじゃねーから」
 睨み付けると戸倉は腕組みをして「うーん」と唸った。
「なんだよ?」
「厳密に言うと標は一寸法師を探しているわけじゃないらしい」
「そりゃそうだろ。あたりまえだ。あれって昔話じゃないか。一寸法師なんかいるわけがない」
「一寸法師的なやつを探しているんだってさ」
「一寸法師的なやつ?意味がわかんねえんだけど?」

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