小説

『どくサイト』夢遊貞丈(『どくめし』)

 最近、姑との仲が悪い。私がいくら掃除をしたところで、必ず粗を探して文句をつけ、味付け栄養を考えて毎日支度をしている食事でさえも、その度、何か一つは愚痴をこぼす。
 掃除、食事だけではない。洗濯、買い物、育児、生活態度。何かにつけて私を目の敵にする。
「――って感じでね、昨日もまた姑様にいくつも文句を言われたのよ」
 私はそのストレスを、近所の奥様との会話で発散する。もう、それが日課。姑の目の届かない家外での、唯一の癒しだった。
「それは大変ね……」
 また、同じ境遇の奥様の話を聞いて、傷をなめ合う。買い物へ行く途中、買い物帰り、子供を公園で遊ばせ、その公園のベンチや遊具の傍で。2人っきりで、複数人で。そうしないと、やってられない。毎日毎日、同じ様に。しかし今日は、それに少し変化があった。
「ふふ、私も、ついこの間まで大変だったの。でもね、もう……」
「もう?」
「あ、そ、そうね。ああ、どうしようかしら、あまりお勧めは出来ない解決方法なのだけれど」
 たまたま、買い物帰りに出会った一人の奥様が、何やら意味深な言葉を漏らす。
「なあに? 解決なんて出来るの? お勧めは出来ないって、どんな方法?」
 その奥様の言葉に、私は分かり易いくらいに喰いついてしまった。
「あらあら……そうね、じゃあ、教えちゃおうかしら。でも、何度も言うけれど、お勧めは出来ない方法よ?」
「いいのいいの! どうせこれ以上悪くは成りようも無いんだから。さ、勿体ぶらずに教えて!」
「うーん、それじゃあ。お宅、パソコンはあったかしら」
「あるにはあるけれど……私、文字を打つので精いっぱいよ?」
「それでも大丈夫。帰ったら、えっと……ここ、このアドレスのページにアクセスしてみて。それでね……」

 奥様に言われた通り、私は家に帰るとすぐに……いや、まずは買い物した物を冷蔵庫やら棚やらに入れないと。そうじゃないと、また姑に何を言われるか分からない。今は幸い、どこかへ出かけている様だけど。きっと近所を散歩しているか、同じ様なご老人が集まる公園にいるんだわ。それでも、いつ帰って来るか分からないしね。

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