小説

『つんデレラ』笹本佳史(『シンデレラ』)

・・・
ある日のこと。
「マジなに?」
私はシンデレラにタバコを一本差し出した。
シンデレラは何も言わずそれを口にくわえ私が傍に置いたライターをすばやく取り上げ慣れた手つきでタバコを吸った。
遠い眼と沈黙を守りながら、ゆっくりと煙を吸いゆっくりと吐いた。
城を取り巻く青々と茂った樹木たち、さえずる鳥たち、ゆっくりと流れるはるか上空の雲たち。すばらしき世界。
シンデレラを見かけたのはついさっきの事。私は驚いて思わず身をひそめたが、城の裏口外階段に小さく腰掛けている姿に憐れみのようなものを感じた。
「だから、マジなに?」
繰り返しシンデレラはあからさまにイラつきながら言う。
私はいつになく強気なシンデレラに少しためらいながら、
「いっ、いやー、ちょっと、なんつーか、そのちょっとネエ様が、ちょっとやりすぎたかもなぁーなんてちょっと思ってさぁ」
と頭をかきながら言った。
シンデレラは短くなったタバコを地面に捨て脚でぐりぐりしながら
「もう慣れっこだし」
とそっけない態度。
 

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