小説

『つんデレラ』笹本佳史(『シンデレラ』)

なんていうのかしら、この硬い床、石の床のやつ、大理石?っていうのこれ?もう掃除なんてしなくてもピカピカしてる、なんで、なんで綺麗なの!
靴脱がないじゃん我々。土足文化でしょ、この世界は。だったら床は汚れてるモノでしょ!そうね。きっとそうね。綺麗と思わせといてほんとは汚れてるよね。
シンデレラを呼びつけた。シンデレラは扉を静かに開け「なんでしょう?」と怯えた表情。
「シンデレラ!ちょっと汚れてるじゃない掃除したの、床!」
とまくし立てて叫んだ。
傍に居た召使達が慌てながら掃除道具を持っておろおろと近寄ってくるのを遮りシンデレラにやらせる。
「シンデレラあなたがやりなさい。」
召使達はバツがわるそうに後ずさりしながら、でも一定の距離を保ちつつこの現状を見守っている。
命じられたシンデレラは黙って、膝を突き一心不乱に床を拭きはじめた。
床を拭き続けるシンデレラの横顔は、透き通った肌にブルーの綺麗な瞳。女の私でも頬擦りしたくなるほどに魅力的です。ママ、ネエ様。
(激いらつく!)
心の中で私は叫んだ。
と同時にある感情が沸き起こる。それはとてもビターで恨めしい。
(醜いわ。マジで醜い。今、床に這いつくばって掃除をしているシンデレラが醜い?違う!ちゃう!私よ!私!私ってほんとに醜い。)
自分に対してイライラする。そのイライラをまたシンデレラにぶつけてしまう。
 

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