小説

『Kのはなし』山田蛙聖(『三年寝太郎』)

 学生たちの間では裏ネットと呼ばれるサイトがあって、一応選ばれた友だちだけの間でアクセスできるようになっていた。実際は誰でも見れた。そこで、幸太郎は依然みなの標的になっていた。
 誹謗中傷の他、時折夜の街で幸太郎を見たといった情報が流れたり、変なデマも流れた。
 ネット上では誰もが一応匿名なので誰もが好き勝手に書ける。匿名といってもそれが誰なのか特定することは簡単なことで、だから自ずと書くことも限定されてしまう。それでも、学校よりも自由な世界だと思っている人が多いはずだ。その証拠に、ネット上では思わぬ人が思わぬ発言をしてそれが許容されたりもする。自由なだけ言葉の暴力も学校生活以上だ。だから、学校の世界に負けず劣らず注意しなくてはならない。
 そのネットの世界で幸太郎はスケープゴートのような役割を果たしていた。
 とりあえずなんでも幸太郎を侮辱しておけばことが済んだ。そんなわけで、「k発見!」などという見出しで目撃談などもちらほら書かれたりしていた。
 ところが、3カ月ほど前から様子が変わってきた。それを教えてくれたのはシホだった。シュンスケはあまりネットの世界には疎かったし、距離を置きたいところもあった。女子はそうはいかなかった。
「ねぇ、しゅんくん、Kと知り合いってほんと?」
 付き合い始めた頃、シホが尋ねてきた。シュンスケはあまり話には乗り気にならずに、ああ、とだけ頷いた。
「Kって神のK。そう言われてるんだよ」
「神?」
「そう、Kを三回見ると、いいことがあるとか、ちょっとでも触ると、願いが叶うっていうんだよ。サイトで今話題だよ」
 

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