小説

『罪深い娘と罪のない息子』山北貴子(『竹取物語』)

翁はかぐや姫の最後の言葉通り、竹を取る生活をしていた。
ある日、竹やぶの中に一人の男が立っていた。
髪を結い、凛として立つ男は翁を見るとこう言った。
「おじいさんに取って来てもらった草は、火を付けると意識を失う効果があると書物に書いてありました。仕方ないとはいえおじいさんとおばあさんまで苦しい思いをさせて申し訳ありませんでした」
翁はその声に聞き覚えがありました。
「かぐや姫はもういません、ですが私は15歳になりました。今度は娘ではなく息子としてあなたたちに親孝行したいと思います」
その言葉を聞くと翁は男の足元にひざまずき、涙を流した。

男は翁と共に屋敷に戻り、ほどなくして妻をもらい子宝にも恵まれた。
生まれた子には必ず女児の恰好をさせ、育てた。
そのおかげか、翁の子孫は大きな病をすることなく健やかに育ったという。

これははるか昔のお話。
 

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