小説

『三つ巴』秋山こまき(『こころ』夏目漱石)

 コーヒーを一口すする。彼女の目をしっかりと見つめ、僕は本当のことを告げる。
「秋子さん。あの夜、須川は、君を愛している、と言っていました」
 彼女の顔がパッと明るくなった。涙が蛍光灯の光に反射して、瞳は一筋の希望をとらえたように輝いた。もう完全に僕など眼中にない。
「じゃ、彼は、わたしを嫌いになったんじゃないんですね?」
「君を愛してる、と言ったのです」
「だから……」
 僕はやさしい声で、ゆっくりと、釘を刺した。
「秋子さん、あなたはその時、ここにいなかったでしょ」

 

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