小説

『家族』NOBUOTTO(『牡丹灯籠』)

 住職が真紀と望の墓に行くと、二人の名前の横に草薙と佐野の名前が刻まれていた。
「真紀、望ちゃん。お前たちが生きている時には何もしてあげられなくてすまなかった。これで真紀や望ちゃんが一番望んでいた家族がみつかったかい。」
 そう言って墓に置いてあった御札を住職は拾い上げた。
 そして、御札を強く握りしめると言った。
「そうか、もっと多くの家族が欲しいのかい。じゃあ、この御札を、また誰かに預けないといけないね。この御札は、この寺に眠っている何100年にもわたる霊達、家族から離れた寂しい霊の気持ちが込められている。これがあれば、みんなをお前達の元へ送ってあげることができる。誰がいいか、また教えてくれ。兄さんも出来る限り事はするから。」
 住職は手を合わせて静かにお経をあげ、そして墓から去っていった。

 

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