小説

『桜の樹の下には』ハラ・イッペー(『桜の樹の下には』梶井基次郎)

 桜の樹の下には屍体が埋まっている!
 これは信じていいことなんだよ。だって、お父さんの本棚にあった難しい本の中に書いてあったんだから。
 とは言っても、やっぱりそんなことを知ってしまった以上、実際に自分の目で見てみたい。
 いまは春休みで、桜の花はまだ咲いてない。それに、ぼくの住んでいるところは雪が融けたばかりだから、土も柔らかい。やるならいましかない。
 場所はぼくの家の裏にある神社にしよう。あそこは人がいないし、土を掘り返して怒られる心配も少ない。それに、そこの桜は、暖かくなっても残念に感じるほどにしか花びらをつけない。見る人もあまりいないんだ。
 日取りは、明日のお昼の12時過ぎぐらいを計画してる。“善は急げ”ではないけど、うかうかしてたら、桜の花が咲いてしまう。それに明日は平日だ。ぼくは春休みだけども、大人たちは仕事に行っている。近所のお年寄りも昼寝をしている時間だ。夜では逆に目立つし、なによりお母さんが外出を許してくれないだろう。
 1人で地面を掘るのは疲れるだろうから、雄介(ゆうすけ)くんを誘った。雄介くんは勉強が嫌いなタイプだけども、ぼくがやろうとしていることを電話で伝えたら、興味津々な感じで「いいよ」と言ってくれた。
 スコップや軍手とかの道具は、物置を覗いたらちゃんとあったし、場所も覚えておいた。
 これで準備はカンペキだ。はやく明日にならないかな。

 いよいよ、作戦を決行するときが来た。
 ぼくはいつも通りお昼ご飯を食べると、おばあちゃんに「雄介くんの家で遊んでくる」と言って家を出た。お父さんもお母さんも仕事に行っているので、家にはいない。おばあちゃんも昼寝をするから、誰にも見られずに作戦が進められそうだ。
 スコップを2つと軍手を予備も含めて4組持って、裏の神社に向かった。
 神社に到着すると、雄介くんはもう賽銭箱の前に座っていた。でも、1人じゃない。雄介くんの目の前に立っている、あれは里香(りか)さんだ。
 

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