小説

『花咲く人生』ものとあお(『花咲かじいさん』)

 いつも通りの一日。いや、小学生の男の子と会ったことでいつもとは少し違う一日だったように思える。
(もしも自分に子供がいたら、孫くらいの年齢なのだろうか。)
 同窓会でも最近は子供より孫の話が多い。子育ては大変な面も多いが、たまにしか会えない孫はただただ可愛いのだという。その気持ちが少しだけ分かるような気がした。

 次の日も、その次の日も散歩コースを小学校周りにしたが、男の子と会うことはなかった。
 何日か過ぎたある日、定番になってしまった小学校のコースを歩いていると、泣き声が聞こえた。何かあったのだろうかと、桜の木のあるほうへ行くと、あの男の子が白い何かを抱きしめながら泣いていた。
「いい加減諦めろよ。家じゃ飼えないって言われただろ。俺だって飼いたいよ。でもどうしようもないじゃないか。」
「だって、美央ちゃんが外にいる犬は保健所に連れて行かれて殺されるって言うんだもん。」
「だから、ビラも配るし皆でシロの飼い主探すために頑張るんだよ。いつまでもお前がそうやっていたら探せないだろう。」
 男の子と、その兄らしい。周りに葉見をしていたときの子供を含め数人いた。女の子は男の子同様泣いている。
「どうしたんだい?」
声をかけると、兄は少し警戒したが、男の子は健一を見ると鼻をすすった。
「おじちゃん。今日もお散歩?」
 泣きすぎてうまく呼吸が出来ないのか少しシャクリながら話すので、紗代子がティッシュを出して鼻をかませ落ち着かせた。
「ああ。お散歩だよ。その白い・・柴犬かい?」
「うん。なんかね、学校に迷い込んでいたの。僕の家で飼いたかったんだけど、ダメだって言われて。でもこのままだとシロ殺されちゃうしどうしよう。」
 そう言うとまた大きな目から涙がぼろりとこぼれた。迷子犬だろうか、それにしては随分綺麗な柴犬だった。
「ねえ、あなた。きっとどこかで飼われていたわんちゃんだと思うから、飼い主さんが見つかるまでうちで飼いましょうよ。」
「いいの?」
 健一が答える前に、男の子が紗代子にしがみついた。
 

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