小説

『子豚の正しい作られ方』馬場万番(『三匹の子ぶた』)

 帰宅するなり、生活保護を断られたときの対処法をネットで調べる。傾向や対策を詳細に教えてくれるサイトがいくつも見つかったが、これを全て読んで理解するのは面倒だった。あるサイトでは、人権団体に同行してもらったところ簡単に申請できたという体験談があった。そこに記載のあった人権団体にメールをして、区役所に同行してもらえることになった。人権団体というものがよく分からないまま同行してもらったが、確かに生活保護の申請ができた。しばらくして、受給基準を満たしているとの通知も受けた。たった一枚の紙切れだったが、これさえあれば僕の生活は保護される。家を追い出された時に、父親から受け取った封筒よりも重みを感じた。
 これで、働かずにアニメを観て暮らせる。おやつを我慢した日は漫画喫茶にも行っちゃおう。生活保護の素晴らしい点は行政に認められた仕組みで生活ができる点だ。もう、僕の生活を脅かすトラブルがやってきても、行政が保護してくれる。
 擦り切れた畳に寝転び、天井を見上げる。黒く変色した木目の天井からは小さな足音が聞こえてきた。ネズミが住んでいてもおかしくない。壁も天井も安っぽい。それでも、会社で社畜として働いていた時期に住んでいたマンションよりも堅牢な造りに感じる。まるでレンガ作りの家にでも住んでいるような安心感が、この生活には満ちている。

 

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