小説

『ふつうの国のアリス』汐見舜一(『不思議の国のアリス』)

「アリス、ずいぶんと幸せそうな顔で寝てたけど、どんな夢見てたの?」とお母さんが尋ねてきます。
「すごく楽しい夢だよ」と私は答えます。「忘れたけど」
 私は、しっかりと時を刻む腕時計と、汚れひとつ付いていないピカピカのキャスケットを携え、新居へと足を踏み入れます。
 私はアリス。今年から中学生の、ふつうの国のふつうの女の子。

 

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